議長

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議長(ぎちょう)とは会議を代表し、会議の運営を統括する役職。類似する役職に「座長」がある。

目次

[編集] 概要

組織によっては議事運営以外の執行権限を付与されることもあり、最高決議機関の議長を組織全体の代表とする組織もある。英語表記の翻訳でSpeaker、Chairman、Presidentなどに対する訳語として用いられる。英語圏でChairmanと言った場合は強い実権を伴う代表者であることが多く、代表取締役の肩書きとして用いられる場合もある。

同様の役職が委員長主席といった職名であることもある。たとえば、中華人民共和国における全国人民代表大会の議長役の職名は「常務委員長」、中国人民政治協商会議においては「主席」である。

[編集] 議会における議長

[編集] 概説

議会を主宰し、議事進行を担当する役職。立法権の代表者である。

各国の議長
議会(一院制) 下院 上院
中華人民共和国の旗 中国 全国人民代表大会常務委員長
フランスの旗 フランス 国民議会議長 元老院議長
イギリスの旗 イギリス 庶民院議長 貴族院議長
日本の旗 日本 衆議院議長 参議院議長
台湾の旗 台湾 立法院長
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 下院議長 アメリカ合衆国副大統領が兼務。[1]
ロシアの旗 ロシア 国家会議議長 連邦会議議長

[編集] 日本

国会及び地方議会における代表者であり会議主宰者である。議長席は議場内中央最上段に設けられている。

[編集] 国会の議長

両議院の議長は国会法上の役員である(国会法16条1号)。

[編集] 選任

議長は各院それぞれ議員の中から単記無記名投票で互選で選ばれ、最多得票者が議長となる(国会法23条、衆議院規則3条、参議院規則4条)。

一般的に議院第一会派の長老格の政治家が選出される例が多く、「あがりポスト」と目されている。1973年より両議院議長は、公平さを期す為に自分が所属している会派を離脱して、無所属で活動することが慣例となっている。

日本国憲法下では議長選挙ではほぼ全会一致で選出される例が多いが、1955年3月の衆議院議長選挙では益谷秀次三木武吉と争ったり、1971年7月の参議院議長選挙では河野謙三木内四郎と争う例もあった。

戦後間もない1948年には衆議院議長職経験を持つ山崎猛が首班候補とする山崎首班構想があったり[2]、戦後日本政治の過渡期には衆議院議長経験者がさらなる権力意欲を目指して政権要職に就任する例は珍しくなかった[3]。しかし、戦後日本政治の過渡期が過ぎてからは議長ポストは長老格の政治家が最後に就任する「あがりポスト」とみなされるようになった。また前尾繁三郎坂田道太は議長退任後に首相就任の声がかかった際に、「議長経験者が首相になるのは国会の権威の上からよくない」として辞退したこともあり、1970年代以降は議長経験者がさらなる権力欲を目指すことは慎むべきとする風潮が浸透していった。議長候補にあげられた二階堂進小渕恵三は前述の風潮を重んじて首相に意欲を示していたために議長就任を断っている。1978年12月以降に議長経験者が行政要職に就任した例としては土屋義彦(1991年10月4日議長退任・1992年7月13日埼玉県知事就任)や江田五月(2010年7月25日議長退任・2011年1月14日法務大臣就任)があるが、議長経験者が行政要職に就任するのは議長の権威を損ねるとして批判的な意見が出ることもある。また土井たか子綿貫民輔が衆議院議長職経験後に小政党の党首に就任し、首班指名選挙で票を得た例がある。

議会が自ら選任した役員を解任するには国会法など議会法上に特段の定めがある場合を除きなしえない[4]。現在、国会法は常任委員長についてのみ解任規定を置いている(国会法30条の2)。議長に対する不信任決議は法的拘束力を有しないとされる。不信任決議を受けた議長が自発的な辞任を拒否した場合、強制的に失職させるために懲罰事犯として除名し議員資格を失わせた例[5]があるが、議長が慣例を無視して自らについての議案の審議に際しても副議長に議事運営を代行させず、かつ職権で懲罰議決の審議や採決を行わせなければそれも不可能である。

[編集] 任期

議長の任期は各々議員としての任期による(国会法18条)。ただし、参議院では通常選挙後の国会召集時に辞任して改めて選挙が行うことが慣例となっている。

[編集] 権限

議長の権限には次のようなものがある。

  • 議院秩序保持権(国会法19条)
権利であると同時に義務であると解されている[6]。議員秩序保持権には議院警察権(国会法114条)も含まれる[6]
  • 議事整理権(国会法19条)
議事日程の決定(国会法55条)や委員会への付託(国会法56条2項)、開議の決定(衆議院規則103条、参議院規則81条)が議事整理権に含まれる[7]。また、議長決裁権(国会法61条)もこれに含まれる[7]
議長が有する議事整理権は政治的に大変強力な権限であるが、実際には議院運営委員会に諮問という形で議事整理に関する判断を委ねる慣行が成立しているため、自己の判断により権限を行使する機会の少ないポストであることから政界においては事実上の名誉職とみられている。本会議の進行中に与野党の事前の打ち合わせと異なる事態が発生した際には、議院運営委員会理事が寄り集まって協議し、その結論に従って議長が議事進行を行う光景が見られる。議長が政治的影響力を行使する局面は、与野党の対立が膠着状態になった際の斡旋や調停などに限られている。議長の権威を背景に、斡旋案提示や党首会談などを呼び掛け、与野党双方がメンツを保ちながら決着につなげる。ただ、斡旋が不調に終われば議長の権威が傷つき、辞任に追い込まれることもある。
  • 議院事務監督権(国会法19条)
  • 議院代表権(国会法19条)
議長は議院を代表して奏上・送付・受理などを行う[8]
なお、旧皇室典範下の皇室儀制令における帝国議会両院議長の宮中席次は、国務大臣枢密顧問官大将およびその他の親任官より下位にあったが、日本国憲法下では、明文規定はないものの慣行上内閣総理大臣の次席に置かれる[9]。またかつて自由民主党では衆参両院の議長経験者を首相経験者とともに最高顧問として遇するなど、公的な席や政界において国会両院の議長には三権の長の一人としての高い格式が与えられている。
[編集] 副議長

副議長は議長に事故があるとき又は議長が欠けたときに会議を主宰する者(国会法21条)。具体的には議長が病休または事故などで不在の時、あるいは議事が長時間になり議長が休息を取る時に議長席に座り議会を進行させる。その職務内容及び権限は正議長に準ずる。

両議院の副議長は国会法上の役員である(国会法16条2号)。副議長の任期は議員としての任期による(国会法18条)。ただし、参議院では通常選挙後の国会召集時に辞任して改めて選挙が行うことが慣例となっている点は議長と同じである。

副議長も議員内から互選で選ばれる。国会の慣例では衆参両議院議長は第一会派から選ばれるのに対し、副議長は第二会派から選ばれるが、議長同様公平さを期す為に所属政党、あるいは所属会派を離党・離脱して、無所属で活動することが慣例となっている(以前は副議長も第一会派から選ばれていた)。

[編集] 仮議長

仮議長は議長及び副議長に共に事故があるときに置かれる議長(国会法22条1項)。選び方は事務総長事務局長が議長席に座り、仮議長選出選挙を行い、最多得票者が仮議長となる(国会法22条2項)。ただし、議院は仮議長の選任を議長に委任することもできる(国会法22条3項)。 仮議長も国会法上の役員とされ(国会法16条3号)、その職務と議事進行に関わる一切の権限は正議長に準ずる。

最近の選出例としては、2004年(平成16年)6月5日の参議院本会議において、国民年金法改正案の審議にあたり、野党から議長不信任決議案が提出されたが、野党出身の副議長が散会を宣告して(無効な散会ということで取り扱われた)本会議の議事続行を拒絶したため、議長不信任案の審議のため竹山裕自由民主党参議院議員会長が仮議長に選出した事例がある。

[編集] 地方議会の議長

都道府県議会、市町村議会に議長が存在する。議員の任期にかかわらず1~2年で交代する慣例となっている自治体もある。国会同様議長は採決に参加しないため、定数の少ない市町村議会では「議長を出した側が採決で負けるため議長職を押し付け合う」という事態も時折発生する(近年では2007年大阪府千早赤阪村議会、合併賛成派と反対派が同数となったため)。

臨時議長

臨時議長とは、地方自治体議会において置かれる臨時の議長である。地方自治体議会では、初招集日で正副議長が決まっていない場合、出席者の中で年長議員を臨時議長にして、議長選出選挙を行う。いわば議長選出選挙を行う為だけに置かれる議長であって、仮議長とは異なる。なお、出席者の内で最年長議員が臨時議長に就いても、更に年長の議員が途中出席した場合は、速やかに臨時議長を交代しなければならない。

[編集] 会社組織における議長

一部の企業には(代表)取締役会議長という役職があり、議長という肩書きを持つ会社役員が居るが、あまり一般的な役職名ではない。

[編集] 軍隊における議長

アメリカ統合参謀本部議長 (Chairman of the Joint Chiefs of Staff)

[編集] 軍需産業における議長

中小の軍需産業企業ではメタルストーム社など代表者の肩書きが議長(Chairman)である企業が多い。 これは軍におけるChairmanが組織のトップであることに由来している。

[編集] 法人における議長

法人においては、理事会などの会合の議事を進行させる役目の人を議長と呼ぶ。議長の権限は法律ないし定款で定められていることがある[10]。また、定款により、たとえば「理事長が理事会の議長を務める」のように定めることがある。この場合、法人の役職に対する肩書きとしての「議長」は存在しない。

[編集] その他の議長

[編集] 座長

議長に類似する役職。会議の代表というニュアンスは薄く、その時々の会合の議事運営について責任を負う暫定的な役職という色合いが濃い場合が多い。 特に学会発表の場合の一枠(セッション)について、司会・進行を担う役割があり[11]、英語の(session) chairに相当する。 ただし、「会議」という名前でも、1回の会合ではなく一定期間続く合議体において、とりまとめ訳を座長と称することがある。例えば皇室典範に関する有識者会議においては座長、座長代理が置かれた。

なお、座長には、演芸関係の興行を行う団体である「座」の長、統括者という意味もある。

[編集] 脚注

  1. ^ 上院仮議長が職務に当たる。
  2. ^ ただし山崎は帝国議会時代最後の議長である。戦前の政治では議長の地位は今よりも低く、貴衆両院議長の宮中席次は第12位で首相や元老はもちろん陸海軍大将や枢密顧問官よりも下であった。
  3. ^ 大野伴睦(1953年3月14日議長退任・1954年1月14日北海道開発庁長官就任・1954年7月27日北海道開発庁長官退任・1957年7月自民党副総裁就任・1960年自民党総裁選出馬・1964年5月29日死去により自民党副総裁退任)、松永東(1955年1月24日議長退任・1957年7月10日文部大臣就任・1958年6月12日文部大臣退任)、益谷秀次(1958年4月25日議長退任・1959年1月自民党総務会長就任・1959年6月総務会長退任・1959年6月18日副総理就任・1960年7月自民党幹事長就任・1961年7月自民党幹事長退任)、中村梅吉(1973年5月29日議長退任・1973年11月25日法務大臣就任・1974年11月11日法務大臣退任)、船田中(1972年11月13日議長退任・1977年11月自民党副総裁就任・1978年12月自民党副総裁退任)
  4. ^ 松澤浩一著 『議会法』 ぎょうせい、1987年、265頁
  5. ^ 帝国議会衆議院における星亨の例。なお、帝国議会の議長は天皇が解任することもできた。
  6. ^ a b 松澤浩一著 『議会法』 ぎょうせい、1987年、272頁
  7. ^ a b 松澤浩一著 『議会法』 ぎょうせい、1987年、273頁
  8. ^ 松澤浩一著 『議会法』 ぎょうせい、1987年、278頁
  9. ^ 中野文庫 ‐ 宮中席次
  10. ^ 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第54条
  11. ^ [wwwsoc.nii.ac.jp/jps/meeting/zacho_mnl.doc 日本物理学会・座長マニュアル]

[編集] 関連項目

  • 議事進行係 - 議事進行に関する動議等を提出する議員。衆議院では「議長ーーー!」と高らかに発することで議場を引き締める役割も担う。
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